雑記:「観る将」瀬戸市への旅

固い記事ばかりになってきてしまいましたので、この辺りで、最近の趣味について書きたいと思います。一応後半は、半ば無理矢理のこじつけですが、弁護士業務に関する話です。

最近の趣味「観る将」

「観る将」

昨年、コロナウイルスの影響で外出することができなくなってから、将棋を観るようになりました。

「観る将」とは、自分は指せないけど、観て楽しむ人のことをいう言葉らしいですが、私はまさに「観る将」です。駒の動かし方は一応分かりますし、解説を聞くと「なるほど!」と分かった気分になりますが、自分では全く指せません。

Abemaテレビで対局を見たり、将棋に関する本、雑誌、漫画を買い集めたり、棋士の先生方のブログを読んだり、ユーチューブを見たり、、、ミーハーに楽しんでいます。

渡辺名人の日常生活を描いた漫画「将棋の渡辺くん」は、当時品切れだったので、中古品を定価の倍額で大人買いしました(笑)。

出張帰りに藤井二冠の出身地・瀬戸市へ

昨年、藤井二冠がタイトルを獲得されたことは、東海将棋界にとって長年の悲願の達成と言われました。私は将棋関係者に知り合いがいないので、なかなか盛り上がりを実感する場面はありませんでしたが、少しでも盛り上がりに触れたいと思い、昨年、出張帰りに瀬戸市に寄ってきました。

藤井二冠の出身地・瀬戸市は、名古屋市の北東にある人口12万人くらいの市です。瀬戸焼の生産や、瀬戸朝香さんの出身地(芸名の由来でもある)としても有名です。

名古屋の中心地である栄から瀬戸市まで、名古屋鉄道の路線(瀬戸線)が通っていて、私が所属する事務所もその沿線にあります。それでも瀬戸市まで行く機会はなかなかなかったのですが、昨年、出張帰りに、少し遠回りして、瀬戸線の尾張瀬戸駅まで行ってきました。

瀬戸蔵ミュージアム

時期は2020年10月の後半で、藤井二冠が二つのタイトル(棋聖、王位)を取り、王将戦挑戦者決定リーグ戦を戦われている時期でした。

尾張瀬戸駅を出て少し歩くと、「瀬戸蔵ミュージアム」があります。ここは、やきものの博物館で、名古屋市内の小学校から校外学習で見学に行ったりします。

その道路を挟んで向かい側から中に入ったところに、「銀座通り商店街」があり、藤井二冠を祝福する垂れ幕などがあったりして、盛り上がりを感じました。

あるお店のシャッターには、手作りの大盤で、藤井二冠の直近の対局の投了図(私が行った時は、王将戦挑戦者決定リーグ戦で永瀬王座に負けてしまった対局)が貼ってあったのが、とても可愛らしくて素敵でした。

弁護士業務における名古屋(東京・大阪の裁判所の専属管轄となる事件)

将棋と弁護士業務は全く関係ないのですが、勝手に東海将棋界に共感を感じている部分があります(笑)。

それは、棋士が関東所属と関西所属に分かれて、将棋会館も東京と大阪にあるのと同じように、私たちも、ある一定の類型の事件については、名古屋の裁判所ではできず、東京か大阪の裁判所に行かなければならないという点です。

裁判所は日本各地にあり、どこに住んでいる人でも裁判が受けやすいようになっています。訴える人(原告・申立人)と訴えられる人(被告・相手方)のどちらに近い裁判所でできるかという問題や、契約書で予めこの裁判所で裁判をすると決めてあったらそれに従わなければならないというようなことはありますが、基本的に裁判所としては日本各地にあります。

しかし、中には、法律の規定により、東京または大阪の裁判所でないとできない類型の事件があります。

特許権などに関する訴え

特許権、実用新案権などに関する訴え(侵害行為の差止請求、侵害行為による損害賠償請求など)については、東京地方裁判所または大阪地方裁判所に提起しなければなりません。

これらの類型の紛争の解決には専門的な知識が必要で、それが東京地裁と大阪地裁に集積されているためです。

東京なのか大阪なのかは、地域により振り分けられていて、名古屋の場合(名古屋高等裁判所の管轄区域内にある地方裁判所が本来の場所となる場合)は東京になります(民事訴訟法6条1項1号)。

ちなみに、名古屋から東京へは新幹線で100分程度、大阪へは新幹線で50分程度です。新幹線代は、東京は往復2万円程度、大阪は往復1万円程度です。

仕事の関係で東京か大阪のどちらかに行く必要がある場合(大使館や領事館の関係など)、たいていは大阪を選びます。藤井二冠も杉本師匠も関西所属ですし、名古屋からすると、地理的な感覚としては大阪の方がかなり近いです。

… なのですが、裁判所が東京か大阪に割り振られる時、名古屋は東京になります。(東と西でだいたい同じくらいになるように分けようとすると、やむを得ないのかもしれませんが。)

ハーグ条約に基づく子の返還申立事件(と近年の経験談)

ハーグ条約(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約)に基づく子の返還申立てとは、国境を超えて子供が連れ去れられたとき(あるいは約束に反して返して貰えなかったとき)に、連れ去られた親が、子供がいる国の裁判所に対して、子供が元々居住していた国(常居所地国)に返すように求めるものです。

ハーグ条約に基づく返還申立てでは、子供を元々居住していた国に返すことを求めるだけで、親権や監護権までは決めません。親権や監護権は、元々居住していた国に返した後で、その国の裁判所において決めます。

日本に連れ去れられた子供の返還を求める場合、東京または大阪の裁判所(家庭裁判所)に申し立てる必要があります。

東京なのか大阪なのかは、子供がいる場所により決まり、名古屋の場合(子の住所地が名古屋高等裁判所の管轄区域内にある場合)の場合は、これまた東京となります(ハーグ条約実施法32条1項1号)。

しかも、この類型の事件は、緊急性がありますので、条約により、原則として6週間で結論を出すことが求められています。

近年、この類型の事件を扱うことがありましたが、ある週に東京家裁に行き、また翌週に行って連日で審理し、また翌々週に行って連日で審理するというようなハードスケジュールでした。

(裁判所は17時までなので、連日の時にいったん東京から名古屋まで帰るか泊まるか迷う人もいるようですが、私は泊まる派です。大阪からなら多分帰るので、100分と50分の差と新幹線代の差は大きいですd( ̄  ̄))

しかし、スケジュール的に大変ではありましたし、名古屋の裁判所でできないことに忸怩たる思いもない訳ではないですが、実感としては、やはり東京に通い詰めてよかったと思います。

日本国内の件数も少なく、外国の判例の調査が必要となることもあり、難しい分野なのですが、その分野の経験を積んだ裁判官や調停委員に事件を扱って貰えて、皆にとってよい解決ができたと感じたからです。

* ハーグ条約に関しては、昨年共著で出版した書籍にも、詳しく書かれています。ご関心がある方は、是非ご参照下さい(^ ^)